髪のダメージケアやスタイリングに欠かせない「ヘアミルク」と「ヘアオイル」。どちらも”髪を保湿する”という点では似ていますが、実は成分や使用感、効果の出方には大きな違いがあります。
この記事では、現役美容師の視点から、ヘアミルクとヘアオイルの違い、それぞれのメリット・デメリット、そしておすすめの使い分け方まで詳しく解説していきます。
ヘアミルクとは?水分ベースの”内側保湿アイテム”
ヘアミルクは、水分と油分をバランスよく配合した乳液タイプのトリートメントです。ミルクという名前の通り、さらっとした軽い質感で、髪の内部に水分を与える**「内側保湿タイプ」**のケア剤です。
主な成分と特徴
ヘアミルクの主成分は水分と油分の乳化成分で構成されています。多くの製品には、ケラチン、アミノ酸、セラミドなどの補修成分が配合されており、これらが髪の内部に浸透しやすい設計になっています。仕上がりはしっとりと柔らかく、髪が本来持つ柔軟性を取り戻すことができます。
乳化技術によって水分と油分が安定的に混ざり合っているため、髪に塗布すると素早く浸透し、内部から潤いを与えることができるのが最大の特徴です。
ヘアミルクのメリット
1. 柔らかく自然な質感に仕上がる
髪がふんわり軽くまとまり、ナチュラルなツヤが出ます。特に「重たい仕上がりが苦手」「自然な動きを残したい」という方に最適です。オイルのような重さがないため、髪本来の動きを損なわず、エアリーな質感をキープできます。
2. 髪の内側まで潤う
オイルよりも水分が多いため、乾燥してパサつく髪にうるおいを与え、手触りを改善します。髪の毛は約12〜13%の水分を含んでいますが、ダメージを受けるとこの水分量が低下します。ヘアミルクは失われた水分を補給し、髪の柔軟性を回復させる役割を果たします。
3. ドライ前の保湿ケアに最適
ドライヤーの熱から守る「ヒートプロテクト効果」がある製品も多く、乾かす前のケアに使いやすいのも特徴です。熱によるタンパク質の変性を防ぎ、ドライヤーやヘアアイロンによるダメージを軽減します。
4. 細毛・軟毛にも使いやすい
軽いテクスチャーなので、ペタッとなりやすい髪でも使いやすく、ボリュームを損ねにくい。特に猫っ毛や薄毛が気になる方でも、根元近くまで使用できるのが大きな利点です。
ヘアミルクのデメリット
1. 保護力がやや弱い
乾燥や紫外線など外的ダメージに対してはオイルほどのコーティング力がないため、ダメージが強い髪にはやや物足りない場合もあります。髪表面のキューティクルを完全に密閉する力は弱いため、外部刺激から髪を守る効果は限定的です。
2. 湿気の影響を受けやすい
水分が多いため、梅雨など湿度の高い季節には広がりやすくなることがあります。水分は空気中の湿度とバランスを取ろうとする性質があるため、湿度が高い環境では髪が膨張しやすくなります。
3. 使いすぎるとベタつくことも
適量を超えると、髪の内部が水分過多になり、重く感じることがあります。特に健康な髪や撥水性の高い髪質の場合、表面に残ってしまい、べたついた印象になることがあります。
ヘアオイルとは?油分ベースの”外側保護アイテム”
一方のヘアオイルは、名前の通り油分が主成分のトリートメント。髪の表面をコーティングしてツヤを与え、外部ダメージから守る**「外側保護タイプ」**のケア剤です。
主な成分と特徴
ヘアオイルの中心となるのは、アルガンオイル、ホホバオイル、椿油などの天然由来オイルや、ジメチコンなどのシリコーンオイルです。これらの成分が髪表面をなめらかにコーティングし、キューティクルを保護します。水分の蒸発を防ぐ”フタ”の役割を果たすため、内部の潤いを閉じ込める効果があります。
天然オイルには抗酸化作用を持つビタミンEや必須脂肪酸が含まれており、髪に栄養を与えながら保護する働きもあります。
ヘアオイルのメリット
1. ツヤとまとまりを出す
髪の表面をオイルが覆うことで、光を反射して自然なツヤを演出します。パサつきや広がりを抑え、まとまりのある髪に仕上げることができます。特にカラーやパーマで傷んだ髪は、キューティクルが開いて光が乱反射するため、オイルでコーティングすることで美しいツヤを取り戻すことができます。
2. 外的ダメージから髪を守る
ドライヤーの熱、紫外線、摩擦から髪を保護し、ダメージの進行を防ぎます。髪表面に油膜を形成することで、環境ストレスから髪を守るバリア機能を果たします。特に紫外線は髪のメラニン色素を分解し、退色やパサつきの原因となるため、オイルによる保護は重要です。
3. パサつき・ハイダメージ毛に最適
ブリーチ毛やカラーによる乾燥毛には、油分でしっかりフタをするオイルタイプが効果的です。ダメージが進行した髪は、キューティクルが剥がれて内部のタンパク質や水分が流出しやすい状態になっているため、オイルで表面を保護することが必須です。
4. スタイリングにも使える
仕上げに毛先に軽くなじませるだけでツヤ感アップ。束感やウェット質感を出したいときにも使えます。近年人気の濡れ髪スタイルやオイリーな質感を演出したい場合にも、ヘアオイルは欠かせないアイテムです。
ヘアオイルのデメリット
1. 重くなりやすい
塗布量を間違えると、べたついたりボリュームがつぶれることがあります。特に細毛の方は注意が必要です。髪が細く柔らかい場合、少量のオイルでも重さを感じやすく、ペタンとした印象になってしまいます。
2. 内部補修力は弱い
オイルはあくまで外側のコーティングがメイン。髪内部の補修にはミルクやクリーム系のケア剤が向いています。オイルは分子が大きく髪の内部に浸透しにくいため、表面的なケアにとどまります。
3. 乾いた髪への使用タイミングに注意
ドライヤー前にオイルを多く塗ると、熱で酸化しやすくなる製品もあるため、適量・適時の使用が大切です。特に天然オイルは加熱によって酸化が進みやすく、かえって髪にダメージを与える可能性があります。
どっちを使えばいい?髪質・目的別のおすすめ使い分け
1. 細毛・軟毛タイプ
→ ヘアミルクがおすすめ
軽い質感でベタつかず、ふんわり仕上げたい方に最適です。ドライ前にミルクをつけて内側から保湿を。細い髪は表面積が小さいため、少量のミルクでも十分に効果を発揮します。根元から中間にかけても使用できるため、全体的なケアが可能です。
2. 太毛・クセ毛タイプ
→ ヘアオイルがおすすめ
広がりやすい髪を落ち着かせ、まとまりとツヤを与えます。毛先中心に塗布してボリュームをコントロール。クセ毛は髪の構造上、水分バランスが不均一なため、オイルで表面を均一にコーティングすることで、扱いやすくなります。
3. ハイダメージ毛・ブリーチ毛
→ W使いがベスト!
まずミルクで内側に潤いを与え、仕上げにオイルで表面をコーティングする”重ね使い”が理想です。ブリーチやカラーを繰り返した髪は、内部と外部の両方がダメージを受けているため、段階的なケアが必要です。ミルクで髪の芯に水分と栄養を届け、オイルでその効果を閉じ込めることで、最大限のケア効果が得られます。
4. 季節による使い分け
冬:乾燥が強いのでミルク+オイルの併用が◎
冬場は空気が乾燥し、髪から水分が奪われやすくなります。まずミルクで水分を補給し、オイルで蒸発を防ぐことで、乾燥によるパサつきや静電気を防ぐことができます。
夏:汗や湿気で重く感じやすいのでミルク中心に軽くケア
夏は湿度が高く、髪が水分を吸収して膨張しやすい季節です。オイルを使いすぎると重くベタつきやすいため、軽いミルクを少量使用するのがおすすめです。必要に応じて毛先だけオイルを使うなど、部分使いも効果的です。
プロが教える!ヘアミルク・オイルの正しい使い方
基本的な使用手順
1. ドライヤー前にミルクを中間〜毛先に塗布
タオルドライした髪に、手のひらでよく伸ばしたミルクを、髪を軽くもみこむように馴染ませます。根元から5cm程度離した位置から毛先に向かって塗布すると、ペタンとせずに自然な仕上がりになります。
2. ドライ後にオイルを毛先中心につける
ミルクの水分を閉じ込める”フタ”の役割を果たします。オイルは手のひら全体に薄く広げてから、毛先から徐々に上に向かって馴染ませていきます。手に残ったオイルで、最後に表面を軽くなでるようにするとツヤが出ます。
3. つけすぎ注意!
ミルクは1〜2プッシュ、オイルは1〜2滴が目安です。特に細毛の方は、少量を手に広げて薄く馴染ませるのがポイントです。髪の長さや量によって調整が必要ですが、最初は少なめから始めて、物足りなければ追加するという方法が失敗しにくいでしょう。
効果を最大化する応用テクニック
夜のケアと朝のケアで使い分ける
夜のお風呂上がりにはミルクでしっかり保湿し、朝のスタイリング時にはオイルでツヤ出しとまとまりを出すという使い分けも効果的です。就寝中は髪が枕との摩擦を受けるため、夜にミルクで栄養を補給しておくことでダメージを軽減できます。
部分使いでより効果的に
髪全体が同じダメージレベルとは限りません。特にダメージが強い毛先には重点的にケアを施し、健康な根元付近は軽めにするなど、部分によって使用量を調整することで、より理想的な仕上がりになります。
ブラッシングとの組み合わせ
ヘアミルクやオイルをつけた後に、目の粗いコームや柔らかいブラシで髪をとかすと、製品が均一に行き渡り、効果がアップします。特にロングヘアの方は、この一手間でまとまりが格段に良くなります。
まとめ:目的に合わせて選ぶのが美髪への近道
| 比較項目 | ヘアミルク | ヘアオイル |
|---|---|---|
| 主成分 | 水分+油分(乳化) | 油分(植物・シリコーンなど) |
| 効果 | 内側保湿 | 外側保護 |
| 向いている髪質 | 細毛・軟毛・乾燥毛 | 太毛・クセ毛・ハイダメージ毛 |
| 使用タイミング | ドライ前 | 仕上げ・ドライ後 |
| 使用感 | 軽くて柔らかい | しっとり・ツヤツヤ |
ヘアミルクとヘアオイルは、どちらか一方ではなく**「内側の保湿」と「外側の保護」**という異なる役割をもっています。
髪の状態や季節、仕上がりの好みに合わせて使い分けることで、理想のツヤ髪に近づけます。自分の髪質やライフスタイルに合わせて、最適なケア方法を見つけることが、美しい髪を保つ秘訣です。
毎日のヘアケアは、積み重ねが大切です。今日から正しい使い方を実践して、サロン帰りのような美しい髪を手に入れましょう。
💡美容師からのひとこと
「乾かす前はミルク、乾かした後はオイル」——この基本を押さえるだけでも髪のまとまりやツヤは格段に変わります。
髪質に合ったアイテムを選び、毎日のケアを楽しんでくださいね。どちらを使うか迷ったときは、まずは自分の髪の悩みが「パサつき」なのか「広がり」なのか「ボリューム不足」なのかを明確にすることから始めましょう。そうすることで、自然と最適なアイテムが見えてきます。
また、製品選びも重要です。同じヘアミルクやヘアオイルでも、配合成分や質感は製品によって大きく異なります。可能であればサンプルを試したり、美容師に相談したりして、自分に合ったものを見つけてください。
コメント